imgi_33_67071_67071_SS26-PH-Centenary-Chandelier-indoor-ON-Portrait-V2.png PH 1/1 Chandelier Centenary Edition by Poul Henningsen, lit, with terracotta opal glass shades on aged brass
on October 09, 2026

PH 1/1 センテナリーエディション:最小のシェードがつなぐ3つの復刻照明

ルイスポールセンはPH誕生100周年を機に、自社のアーカイブをあらためて紐解きました。今回復刻された3つの照明に共通するのは、ポール・ヘニングセンが手がけたなかで最も小さな、完結したシェードセットです。本稿ではこのPH 1/1シェードを、1930年代のシャンデリアからピアノランプ、充電式のテーブルランプまでたどり、それぞれの復刻版がオリジナルの図面から何を受け継いでいるのかを解説します。

一つの照明ではなく、シェードのシステム

ヘニングセンが設計したのは、一つの照明というよりも一連の法則でした。1925年のパリ博覧会でPHランプが金メダルを獲得した後、1926年に発表されたスリーシェードシステムは、上・中・下の3枚のシェードを電球の周りに配し、どの視線からも光源が直接見えないようにしています。光は一枚のシェードの内側に当たって次のシェードへと反射し、まぶしさのないまま下方と外側へ広がります。シェード同士の比率は、彼の黄金比3:2:1に従っています。

比率に基づくシステムだからこそ、サイズを変えることができました。ルイスポールセンはシェードを段階的なサイズで製作しており、PHの名称に含まれる数字はそのサイズを示しています。最初の数字がトップシェード、2番目の数字が下側のシェードです。PH 1/1はその最も小さな段にあたります。トップシェードの直径は約10 cmで、PHランプの一部分ではなく、一つの完結したPHランプとして成り立つ最小のセットです。サイズ体系の全体は、解説記事「PHスリーシェードシステムの仕組みと数字の意味」で詳しく紹介しています。

この小さなサイズこそが、センテナリーの復刻シリーズを貫く共通項です。ルイスポールセンは新しいかたちを生み出すのではなく、PH 1/1のセットがすでに役割を果たしていた過去のカタログからデザインを探し出し、それらを再構築しました。

点灯したPH 1/1 Chandelier Centenary Edition。ブロンズ仕上げの真鍮アームにダスティテラコッタのガラスシェード
PH 1/1 Chandelier Centenary Edition。すべてのアームに3枚組のシェードセットが付いています。

シャンデリア「Bombardement」の復活

3つのなかで最も目を引くのがPH 1/1 Chandelier Centenary Editionです。1933年から1960年代半ばまでルイスポールセンのカタログに掲載され、「Bombardement(ボンバルドマン)」の愛称で親しまれたシャンデリアを復刻したものです。各アームにそれぞれ完全なPH 1/1セットが付いているため、大きな一つのシェードではなく、中央のボディの周りに小さなPHランプが寄り集まったように見えます。

復刻版の素材は、使い始めたその日から落ち着いた風合いに見えるよう選ばれています。吊り具とボディはブロンズ仕上げのエイジド真鍮で、パティナを保つためにラッカーが施され、表面には細かなヘアラインが残されています。シェードはダスティテラコッタ色の4層構造の手吹きオパールガラスで、内側はサンドブラストによってマットな白に仕上げられ、反射光をやわらかく保ちます。ルイスポールセンはこれを厳格な数量限定のナンバー入りエディションとして発表しており、各ピースには金色の刻印が入ります。3アームタイプは1000台、6アームタイプは400台、そしてシリーズを締めくくる9アームタイプは200台です。

実際のサイズを見ると、3アームタイプは527 x 344 x 527 mm、重さ9.0 kgです。6アームタイプは高さ344 mmのまま幅が606 mmに広がり、重さは15.0 kgになります。各アームには最大20 WのE14電球を使用します。これほど存在感のある照明には、その主役となれる空間がふさわしいでしょう。ダイニングテーブルの上、玄関ホール、あるいはリビングの中央です。すべてのシェードが反射によって光を届けるため、夕食どきに合う落ち着いた明るさを保ちながら、空間全体を満たしてくれます。

ブロンズ仕上げの真鍮とテラコッタのオパールガラスシェードによる6アームのPH 1/1 Chandelier Centenary Edition
6アームタイプ。幅606 mmで、6組の完全なPH 1/1シェードセットを備えています。

テーブルサイズになったピアノランプ

ヘニングセンが最初のPHピアノランプを描いたのは1931年、楽譜を読む人のためでした。曲線を描く可動式のステムがシェードを鍵盤の上へと差し出し、背面の球形のカウンターウェイトがバランスをとります。ヘッドは後方に45°、前方に25°傾けられるため、光は演奏者の目ではなく楽譜の上に落ちます。彼のQuestion MarkやLunaと同じ、曲線のステムを持つデザインの系譜に連なる照明です。

PH 1/1 Piano Table Lampはその機構をそのまま生かし、テーブルランプのサイズへと縮小したもので、ここでPH 1/1シェードが活きてきます。シェードにはシャンデリアと同じ4層構造の手吹きダスティテラコッタガラスを用い、内側は白、下部にはフロスト仕上げのディフューザーを備えています。そのため、部屋の向こうからは温かみのある色が映え、真下に落ちる光は穏やかに保たれます。フレーム、アーム、カウンターウェイトはブラッシュ仕上げのエイジド真鍮にクリアラッカーを施したもので、スイッチハウジングにはヘニングセンのイニシャルが刻まれています。

サイズは幅417 mm、高さ364 mmで、ベースはØ153 mm。2.6 mのダークブラウンのファブリックコードと、本体のスイッチを備えています。光源は最大20 WのG9電球1灯です。ガラスは手吹きのため、シェードはひとつひとつわずかに表情が異なります。ピアノの上では本来の役割を果たし、デスクやベッドサイドテーブル、奥行きのある窓辺でも、角度を変えられるヘッドが読書の手元をしっかり照らします。

点灯したPH 1/1 Piano Table Lamp。テラコッタのガラスシェードとブラッシュ仕上げの真鍮アーム
PH 1/1 Piano Table Lamp:1931年の機構に、最小のPHシェードを組み合わせています。

コードから解き放たれた、同じシェード

3つめの照明は、ヘニングセンの時代には技術的にかなわなかった場所へとPH 1/1セットを連れ出します。PH 1/1 Portable Lampは、最小の完結したシェードセットを削り出しの真鍮ベースに載せたもので、仕上げは高光沢のクロムメッキとブラスメタライズの2種類。充電式バッテリーで点灯します。

こちらのシェードはテラコッタではなく手吹きの白いオパールガラスで、よりクールでクラシックなPHらしい表情を見せます。内部には2.5 WのDim-to-Warm LEDを搭載し、明るくするにつれて1800 Kから2700 Kへと色温度が変化します。調光は無段階と4段階の両方に対応しています。フル充電で最大光量なら約5時間点灯し、充電はUSB-Cで行います。IP44に対応しているので、暖かな夜にはダイニングテーブルからバルコニーへ持ち出すこともできます。

160 x 291 x 160 mm、1.8 kgと、PHランプを手にする最もコンパクトな選択肢です。本棚やベッドサイドの棚にも窮屈さなく収まり、重なり合うシェードは一目でそれとわかるため、消灯しているときでもヘニングセンの作品だと伝わります。

真鍮とクロムのベースに白いオパールガラスのシェードを載せたPH 1/1 Portable Lamp
2つの仕上げのPH 1/1 Portable Lamp。シェードは白いオパールガラスです。

3つを並べて読み解く

並べてみると、ヘニングセンの思想がいかにシェードそのものに宿っていたかがわかります。同じ小さなセットが、吊り下げ照明に灯る複数の光のひとつとして、バランスのとれたアームで手元を照らす読書灯として、そして部屋から部屋へ持ち運べる独立した照明として機能しています。

  • PH 1/1 Chandelier Centenary Edition:1933年から1960年代半ばまでカタログに掲載されたアーカイブデザイン。ブロンズ仕上げのエイジド真鍮にテラコッタのオパールガラス。ナンバー入りの限定エディション。
  • PH 1/1 Piano Table Lamp:1931年のピアノランプがベース。ブラッシュ仕上げのエイジド真鍮にテラコッタガラス。光の向きを変えられる可動式ヘッド。
  • PH 1/1 Portable Lamp:クロムまたはブラスメタライズに白いオパールガラス。充電式LED。IP44で屋内外に対応。

シャンデリアとピアノランプはテラコッタガラスによって対の関係で結ばれるため、テーブルの上にひとつ、近くのデスクにもうひとつ置きたい住まいによく合います。ポータブルは色こそ異なるものの比率を共有しているので、すでに部屋にある大きな白いPHのペンダントやテーブルランプとも自然になじみます。ヘニングセンのほかの作品やカタログ全体とあわせて検討するなら、ルイスポールセンのコレクションをご覧ください。